宇宙線は大気の原子核と衝突してパイ中間子(π中間子→「素粒子」)が大量に発生するが、荷電中間子はミューオンとミューニュートリノに崩壊し、ミューオンはさらに電子、反電子ニュートリノとミューニュートリノに崩壊する。ミューオンは平均寿命が20μ秒(マイクロ秒 μは10-6=100万分の1)と素粒子の寿命としては長いが、さらに相対論効果で寿命が延びる。このためにミューオンとして飛行する長さは数km以上になる。ミューオンは通常の放射線に比べても非常に透過性がよい。地上付近にはこのように宇宙線から生じた大量の「ミューオン流」が存在する。ミューオン流は上からも横からもある。この自然のミューオン流の透過率を複数の方向から測定することで、非破壊の断層写真を得ることができ、溶鉱炉や火山の内部の断層診断に役立っている。
2014年、このミューオンを利用した透視の技術は、原子炉はX線では透視できないため、福島第一原子力発電所の事故を起こした原子炉の内部の探索に用いられた。16年、この技術によってはじめて物体の分布が推定された。また、一定物質中のミューオン通過中に受ける原子核の電荷による多重散乱の角度から、物体の元素の特定も可能になっている。