ユニバース(宇宙)のユニ(単一)をマルチ(多重)に置き換えて、人間が現在つながりをもっていない宇宙がいくつもあるのだという考えを表す造語。宇宙が多重で、多くの隠れた宇宙があるという観念自体は地獄・極楽のように、有史以来いつの世でもあったが、これを最近の研究テーマとダブらせたものである。
B.グリーン著「隠れていた宇宙」ではインフラトン多宇宙、パッチワールド多宇宙、ブレーン多宇宙、ランドスケープ多宇宙、ホログラフィック多宇宙、「量子測定の多世界」など、9種類の例が挙げられている。近年、マルチバースが多く語られだしたのは、時空を含む相互作用の統一理論を作るために次元や対称性を増やしたせいで、現実の宇宙を選びだす原理が見いだせなくなったことに一つの原因がある(インフラトン、ブレーン、ランドスケープなど)。これらは「不安定である」、「初期条件が確定できない」、「可能性を広げ過ぎ」、「理論がまだ不十分である」などに起因する。また、無限性を有限な元に落とし込む空間対称性に由来するものもある(パッチワールド、ホログラフィック)。膨張宇宙をイメージした多宇宙と違って、「量子測定の多世界」は、確率的にゼロでない可能性はすべて存在するという量子力学の基本に関する一つの仮定である。