量子力学では、物理量の測定値がばらつくという不確定さが必然的に伴う。特に、互いに特別な関係にある二つの物理量のおのおのの不確定さを掛け合わせた積の大きさには、越えられない絶対的な下限があり、その大きさはプランク定数(Planck constant h=6.63×10-34J・s)の程度である。例えば、粒子の位置座標と運動量、角運動量と角度座標、場の強さと位相などが、こうした特別な二つの物理量の組である。この関係はハイゼンベルクの不確定性関係(Heisenberg’s uncertainty relation)と呼ばれる。不確定さの原因には二つあり、一つはロバートソンの不等式(Robertson’s inequality)と呼ばれる量子状態に固有のものであり、もう一つは測定過程の擾乱(じょうらん)に由来するものである。ハイゼンベルクの不確定性関係の提示では、この二つの区別が混同され、後者の意味で受け取られていたが、小澤の不等式(Ozawa's inequality)では、これらを実験によって区別できるようになっている。また、不確定性関係は、二つの不確定さの積に対する下限なので、片方の不確定さを大きくして、他方の不確定さをどこまでも小さくすることはできる。その範囲のなかでも、コヒーレント光(coherent light 無数の光子が一つの波として束になった光)やスクイーズド光(squeezed light 片方の不確定さを大きくする代わりに他方の不確定さを小さくした状態の光)といったおのおのの不確定さを自在に制御する技術が量子光学によって可能になっている。