ニュートリノ以外のフェルミオン(fermion 半整数値のスピンをもつ素粒子。フェルミ粒子ともいう)の素粒子では、左巻き回転と右巻き回転のスピンが存在するが、ニュートリノについては左巻き(反ニュートリノでは右巻き)しか観測されていない。この事実について、右巻きニュートリノは重いために観測されていないが、質量の固有状態が右巻きと左巻きの混合状態であるために、左巻きニュートリノの質量が他の素粒子に比べて異常に小さいのだと説明される(→「ニュートリノ質量」)。この理論はシーソー機構(seesaw mechanism)と呼ばれている。この理論によって宇宙初期を考えると、ニュートリノは右巻きも左巻きも存在したが、低温になるにつれて質量の大きい右巻きニュートリノは熱平衡から切れた崩壊を始めるということになる。そして、この崩壊を通じてレプトン数(lepton number 電子やニュートリノなどの軽粒子の数)に非対称性が生じ、この非対称性をさらにバリオン数(baryon number 陽子や中性子などの重粒子の数→「反物質」)の非対称性に転化するというシナリオを作ることができる。このレプトジェネシスというシナリオは、宇宙に反物質が存在しない原因を説明する有力な理論と見なされている。