ふつう、力学とは粒子の位置が時間とともにどう変化していくかを解くことであるとされている。しかし、複雑な系になると、このアプローチは有効でなくなる。むしろ、力学量を座標軸とする相空間(たとえば、位置をx軸、運動量をy軸にとった空間)を考え、そこに表現される解曲線(空間の各点に連続的にベクトルを与えたベクトルにおいて、そのベクトルを接線にもつ曲線)の定性的性質を調べる方が有効となる。こうしたアプローチはアンリ・ポアンカレによる三体問題の研究から出発したものだが、この見方では運動というものを写像の一種とみなすことができ、非時間的な見方となる。力学へのこうしたアプローチはカオスなどの研究にも、その道をひらいた。