南極点に設置された、ハーバードCMBグループによる宇宙マイクロ波背景放射(CMB ; cosmic microwave background radiation 宇宙から等方的にやってくるマイクロ波)観測用望遠鏡。CMBの全天観測はWMAP(ダブリューマップ)やプランク衛星という大型の観測衛星によってなされている。これらと同様の波長域のCMBは地上でも観測できるが、地球大気の影響を避けるために、南極やチリの高地で行われる。地上観測の場合、視野が限られるが、検出素子の数を大幅に増やせるほか最新の機器へのアップデートも容易であるなど、高度な技術が使える利点もある。
BICEPは2006年から観測を開始し、CMB偏光のBモード、つまり原始重力波の「刻印」ともいえる磁力線状に振動方向が偏ったCMBの探索を行ってきており、10年以後は検出素子を512個に増やしてBICEP2として稼働。その角度分解能は1~5°、視野は固定した方向から60°ほど、対応するCMBの波長は150GHz(ギガヘルツ)、検出器は微小な偏光に対応するために250mKの低温に冷却して熱の影響を低減している。14年3月には、BICEP2により宇宙誕生直後の原始重力波が発見されたと発表され、大きな反響があった。しかし、その後、これは銀河ダストなどによる偏光の成分が混入したものと解釈され、原始重力波であるとの結論は保留されている。15年からは素子を2560個に増やしたBICEP3の観測期に入るとしている。このほかに、南極点のKeckアレー(Keck array)、チリのCLASS(The Cosmic Linear Anisotropy Solving System)やACTPol(polarization-sensitive receiver for the Atakama Cosmology Telescope)などによる地上観測の結果も出る予定である。