非線形系のパターン形成や自己組織化現象の研究において、過去40年以上にわたって最も精力的に研究されてきた範例的な現象。クエン酸サイクル(citric acid cycle)に類似の化学反応を無機化学反応によって実現する試みの中で、1951年にボリス・ベロゾフにより「振動する化学反応」として実現されたが、学会から認められず、後年アナトール・ジャボチンスキーの再発見によって世界を驚かせた。この反応はマロン酸の臭素酸ナトリウムによる酸化反応で、触媒として金属イオン(セリウム、後にフェロイン)が用いられ、酸化状態と還元状態の間で反応液の色が変化する。ニューロンなどと同様に、条件によって振動系にも興奮系にもなりうる。また、シャーレ内の反応液が、回転する渦巻き波(spiral waves)や拡大する標的状パターン(target pattern)など時間的に発展するさまざまなパターンを示すことから、その実験的・理論的研究を通じてこの系は非線形科学の発展に重要な寄与をなした。反応は通常1時間程度で平衡に達するが、外部から反応物質をゆっくり注入する技術が開発されて以後、パターンをかく乱することなく、任意の長時間にわたって反応を持続させることができるようになった。また、金属触媒としてルテニウムを用いることで光感受性を獲得することから、光刺激によってパターンをさまざまに制御することも可能になっている。