生体膜では一般に膜内外に一定の電位差、すなわち膜電位(membrane potential)が存在するが、膜電位が外部刺激によってある閾値を超えると一過的に大きく変動して、最初の電位、すなわち静止電位(resting potential)に復帰するという場合がある。これが膜の興奮現象であり、この現象を示す細胞はニューロン(neuron)や心筋細胞(myocardial cell)など生体に広く存在する。また、ベロゾフ・ジャボチンスキー反応系や発振回路などの非生命系でも興奮現象は現れる。興奮性は非平衡開放系に固有の普遍的な性質の一つと見なすことができる。興奮現象は振動現象と密接な関係がある。たとえば興奮性膜の場合、膜電位が大きく変動した後、復帰すべき電位が閾値を超えてしまうために、繰り返しの興奮が起こる場合がある。すなわち、これは振動現象(oscillation)である。一定の電流が膜に入力されると、繰り返しの興奮が起こる。心筋組織やシャーレ内の反応液のように、興奮系が空間的に広がった場をなしている場合には、そこに特有の波動現象や動的パターンが出現する。神経線維を伝播する電位パルスはその単純な例である。二次元や三次元の興奮性媒質に現れる波動現象は、ベロゾフ・ジャボチンスキー反応の研究を通じてその詳細が明らかにされている。