熱や光によって分子が分解されると、結合部分の共有電子対が切断されて、不対電子(unpaired electron)をもった不安定な物質ができる。これをラジカル(フリーラジカル free radical)あるいは遊離基という。塩素(Cl2)と水素(H2)の混合物に400nm(ナノメートル nは10-9=10億分の1)付近の波長をもつ光を照射すると、まず・Cl(・は不対電子を示す)ラジカルができ、それが引き金となって連鎖的にラジカル反応が進み、HClができる。ラジカルは反応性に富み、その性質を利用してラジカル重合による高分子の合成がなされている。不対電子は磁性の面からみるとミクロな磁石であり、ラジカル分子の配列の仕方によっては強磁性体となる。最近では、安定なラジカル分子を用いて分子磁性体(molecular magnet)をつくる研究が盛んに行われている。