NMR(nuclear magnetic resonance 核磁気共鳴)は通常試料を適当な溶媒に溶かして測定するが、溶媒に難溶な有機物も多いし、高分子や材料などは溶媒に不溶である。ところが、固体試料はきわめて分解能が劣るシグナルしか与えない。近年、強いラジオ波を照射しながら試料を一定角度で高速回転して、高分解能シグナルを得るCP-MAS NMR(cross polarization-magic angle sample spinning NMR)が開発され、固体試料の測定が可能になった。最近では、強い磁場を出せる超伝導磁石を備えた装置による固体の研究が盛んになり、固体の原子レベルでの構造に新しい知見が得られるようになった。固体の構造情報を得る最良の手段は、X線のビームを試料に照射して、その屈折や散乱の状態から結晶構造を調べるX線結晶解析(X-ray crystallographic analysis)だが、この方法は原子が規則的に配列している結晶性物質にだけ適用できる。しかし、多くの材料や高分子は非結晶性であるから、この固体高分解能核磁気共鳴の利点は明らかである。