植物が行っている光合成は、太陽光によって二酸化炭素(CO2)を水(H2O)で還元して、でんぷん((C6H12O5)n)と酸素(O2)を生成するものである。このとき、葉緑体のクロロフィルが光増感剤(photosensitizer)として重要な働きをする。これを人工的に再現しようとする試みを人工光合成というが、現在ではまだ完全な人工光合成システムの構築はなされていない。しかし、それにつながる多くの研究成果が得られている。昨今光触媒として知られる酸化チタン(TiO2)に太陽光を照射して、水を水素と酸素に分解する本多-藤嶋効果(Honda-Fujishima effect)は、人工光合成の重要な第一歩である。フランスのルイ・パスツール大学のJ.M.レーン教授らは、アミン系電子供与体(還元剤)の存在下でレニウムの化合物((fac-Re(bpy)(CO)3Cl),bpy=2,2’-ビピリジン)を光触媒として二酸化炭素を一酸化炭素に還元することに成功した。また、ルテニウム錯体([Ru(bpy)3]2+)を光増感剤とし、[Co(bpy)n]2+などの金属錯体を触媒として、二酸化炭素を一酸化炭素やギ酸(HCO2H)、メタノール(CH3OH)などへ光還元する成果が報告されている。