古くは酸っぱい味がする物質を酸、苦い味がする物質をアルカリと呼び、それらが互いに相手の作用を打ち消す、すなわち中和(neutralization)することが知られていた。この定義はその後変わり、19世紀末S.A.アレニウスは水に溶けてプロトン(陽子)H+を出す物質を酸、水酸化物イオンOH-を出す物質を塩基と定義した。20世紀になってJ.N.ブレンステッドとT.M.ローリイはこの定義を修正して、プロトンを受け取る物質を塩基と再定義した。また、原子構造と電子の役割が明らかになった結果、G.N.ルイスは電子対を相手から受け取る働きをもつ物質を酸、電子対を相手に与える働きをもつ物質を塩基と定義した。なお、アルカリという用語は、ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物(NaOH)、カルシウムなどのアルカリ土類金属の水酸化物(Ca(OH)2)や炭酸塩(CaCO3)などの水溶性塩基の名称として現在でも用いられている。酸、塩基の示す性質をそれぞれ酸性(acidity)、塩基性(basicity)というが、アルカリ性(alkaline ; alkalinity)も塩基性の同義語として用いられている。酸、塩基のどちらも、水に溶けたときに電離してイオンになる割合(電離度 degree of ionization)が異なる。電離度が大きい物質は強酸(strong acid)、強塩基(strong base)、電離度が小さい物質は弱酸(weak acid)、弱塩基(weak base)と呼ばれる。硫酸(H2SO4)、硝酸(HNO3)、塩酸(HCl)は強酸、酢酸(CH3COOH)は弱酸、水酸化ナトリウム(NaOH)は強塩基、アンモニア(NH3)は弱塩基である。酸性の溶液はリトマス試験紙(litmus paper)を赤に、塩基性の溶液は青に呈色する。