生物の個体が示す行動の中で、自身にとっては生物学的に不利益であるのに、同種の他の個体に利益を与える行為。アリのなかまの働きアリや、シロアリのなかまの兵隊アリなどが示す行動がその例で、それぞれの行為が自身の生活や子孫の繁栄には有利ではないが、社会生活を営む同種集団にとっては利益があると考えられる。有利か不利かを判定する基準としては、生存率や個体の適応度などが用いられる。1960年代末ごろから、イギリスおよびアメリカを中心に発達してきた社会生物学(ソシオバイオロジー sociobiology)では、利他行動がなぜ生じたかの説明を重視している。多くの人は、利他行動を示す個体は生存に不利であっても、その近縁の個体の生存が有利になるという血縁淘汰の考えを支持している。