西洋の絶対主義王権が領域的支配圏を確立したとき、近代国家の枠組みが成立した。この政治的領域は後に国民国家と呼ばれる。すべての国家権力は簒(さん)奪権力であるから、その正統性を主張するために、国家の理論が作られた。その内容は、主権の正統化と権威による合法性の獲得であった。
民主主義政体もまた、内部の分裂をかかえるために、主権の正統化がつねに課題になってきた。議会や裁判所のような国家装置は、実効的支配の装置であり、権力の正統化を担当するのは国家のイデオロギー装置である。近代国家は、複雑なイデオロギー装置から構成されており、そのおかげで安定性が保持される。