あらゆる国家は、政体の性格の差異を超えて、仮想敵を暗黙のうちに想定している。国家性格が民主的だから戦争はしないが、専制国家は戦争する、という考えには根拠がない。どの国家も例外なく、危機に瀕すれば、全民衆を兵士として動員する。人が国家メンバーであるという事実は、自己の生命を国家のために犠牲にする絶対的義務を、ひそかに要請している。国家があるかぎり、戦争はつねに潜在的に存在しているが、現実に戦争が勃発する原因の説明は、一義的ではない。「戦争は別の手段による政治の継続である」と言おうと、それを反転して「戦争は別の手段による経済の継続である」と言おうと、それらは戦争の別々の側面を語るにすぎない。