最近の日本思想界の中に突如として複数のマルクス論が登場したばかりでなく、マルクス(Karl Heinrich Marx 1818~83)の新訳著作集(『マルクスコレクション全7巻』筑摩書房)すら登場した。これは何を意味するのか。
一般的傾向からいえば、現在の地球規模で展開する世界経済は市場原理主義者が楽観的に主張するような調和的ではなく、反対に搾取する階級・搾取国家と搾取される階級・被搾取国家の分断を地球規模に拡大した。世界資本主義は、マルクスが19世紀に予測したように展開している。いまや資本主義は地球上の全人類を飲み込み、人間の破壊と自然の破壊を同時に推進している。この現実を原理的に解き明かす理論はマルクスの理論以外にないという実感が万人に共有され始めた。それがマルクス復興をもたらした。
マルクスのテキストの旧訳はもの足りない。新訳の要求は以前からあったが、ついに実現した。翻訳は解釈であり、そのつど新しい何かを発見させる。新訳によってマルクスへの偏見がなくなり、世界解読の新しい道具が発見されるだろう。