想像力は、カント(Immanuel Kant 1724~1804)における認識生産能力も重要であるが、社会生活のなかで働いて社会構造を構築したり、自己反省によって人間の自己理解をうながす文化的形成物になることがありうる。社会の秩序を正統化する側面を強調するとき、社会的想像力と呼ばれ、人間の自己理解を促進し、現存社会に批判的にする側面を強調するときには文化的想像力と呼ばれる。
いまここでポール・リクール(Paul Ricoeur 1913~2005)の用語法(『イデオロギーとユートピア』)に従って語っているが、マルクスの用語でいえば前者はイデオロギー(ideology)に当たり、後者はユートピア(Utopia)に当たる。イデオロギーとしての社会的想像力は現存社会の秩序を肯定する意味での正統化(legitimation 英、仏)機能を持つ。ユートピア的な想像力は社会への疑問と反対提案を行う。どちらも社会生活に内在する重要な要素である。想像力なき人間はありえないのだから、これが現実の社会のなかで活躍する場面を確認し、われわれの自己理解を深めることが課題になろうとしている。