文脈によってさまざまに訳されうるが、万物を支配する秩序や法則、根拠、理性、そして言葉などを表す。世界についての語り方が、神話(ミュトス mythos 希)から、ロゴスを重視した統一的・整合的な説明へと移行してゆく点に、古代ギリシャにおける哲学の生成と展開の核心があった。その後、キリスト教思想、中世哲学などを経て、ロゴスの意味は微妙に変化するが、西洋の哲学・科学の主流は、ロゴスへの強い信頼の上に成り立ってきたといえる。しかし現代、そうした西洋思想のあり方は、例えばデリダ(Jacques Derrida 1930~2004)によってロゴス中心主義(logocentrisme 仏)として批判的に把握されるほか、ロゴスをもつ動物という古典的な人間観に対してもさまざまな疑念が投げかけられている。