合理論は、世界や行為、認識の成り立ちを理性(ratio 羅)により基礎づけられうるものと考える立場。認識論上これと対立する経験論は、知の源泉を経験にのみ見いだす。いずれも古くから現在まで見られる立場であるが、特に近世のデカルト(Ren Descartes)、ライプニッツ(Gottfried Wilhelm Leibniz 1646~1716)らの思考が大陸合理論、ベーコン(Francis Bacon 1561~1626)、ロック(John Locke 1632~1704)らのそれがイギリス経験論と呼ばれる。
両者の対立点は多様だが、特にアプリオリな知、つまり個々の経験に先立つ知を認めるか否かが一つの分岐点となる。確実な知の源泉として生得観念のような経験に先立つ知を認める傾向のある合理論に対し、経験論はいわば「白紙」としての心に経験を介してのみ知識が生じるとする。学問の方法をめぐっては、合理論が、諸前提から論理的形式のみに従い必然的結論を導く演繹(deduction)に重きをおくのに対し、経験論は、観察される個々の事例から普遍的結論を導こうとする帰納(induction)に力点をおき、経験(experience)としての実験(experiment)を重視する傾向にある。