デカルト(Ren Descartes 1596~1650)が哲学の第一原理とした命題。「われ思う、ゆえにわれあり」(「私は考える、ゆえに私はある」)と訳される。デカルトは、諸学の基礎となる絶対的原理を見いだすために徹底した懐疑を行った(方法的懐疑)。しかし懐疑を遂行しうるかぎり、疑わしいと考えている当のものが存在することは疑いえない。その当のものとは、考える私である。そう考えたデカルトは、この原理から数学的な諸原理や自然学の妥当性を演繹的に導き出そうとした。
「コギト」(私は考える)の確実性から出発するこのデカルトの思考は、カント(Immanuel Kant 1724~1804)、フッサール(Edmund Husserl 1859~1938)、サルトル(Jean-Paul Sartre 1905~1980)らに大きな影響を与えた。しかし他方で、「考える私」の存在をめぐっては、現代にいたるまでさまざまな批判がなされている。