20世紀の初頭ころより開始された、哲学の方法に関する大きな転換の動向。近代の哲学は「意識」を主題とする傾向にあったが、それに代えて「言語」の分析を中心に据えることにより、さまざまな哲学的問題を解決(または解消)しようとする動きのこと。
その一つの源泉となったのは、フレーゲ(Friedrich Ludwig Gottlob Frege 1848~1925)が着手した、論理学の革新であった。その後ラッセル(Bertrand Arthur William Russell 1872~1970)らに引き継がれた、この記号論理学の構築の動きは、前期ウィトゲンシュタイン(Ludwig Wittgenstein 1889~1951)の思考とともに、カルナップ(Rudolf Carnap 1891~1970)ら論理実証主義(ウィーン学団)の思想に決定的影響を与え、人工言語により理論を定式化することで哲学的諸問題を解決・解消しようとする動きにつながった。
こうした動向に対しては、しかし言語分析を主題とする哲学(分析哲学)の内部からも異論が起こり、日常言語の働きをよりよく理解することで哲学的諸問題の解明を目指す動きが生じた。日常言語学派と呼ばれる人々により遂行されたこの動きは、後期ウィトゲンシュタインの言語ゲーム(Sprachspiel 独)論の影響も強く受けながら、オースティン(John Langshaw Austin 1911~60)らによる、言語行為論(speech act theory)の展開などを通じ、多様な領域に広く影響を及ぼすことになった。こうした言語論的転回の動向は、20世紀以降の哲学にとってはむろん、現代のさまざまな学問や思想にとっても一つの決定的な基盤をなすものとなっている。