現代の英米系倫理学では、倫理学を「規範倫理学」「メタ倫理学」「応用倫理学」の三つに区別する。この区別における規範倫理学とは、人々の行動指針という意味での「規範」(norm)について探求する学問分野を指す。具体的には、「正しいものや善いものとは何か」や「我々はどう行為すべきか」といった価値判断にかかわる理論(倫理学理論)を探求する。代表的な倫理学理論としては、カント(Immanuel Kant 1724~1804) に端を発する「義務論」、「帰結主義」およびその一分野でベンサム(Jeremy Bentham 1748~1832)が創始しミル(John Stuart Mill 1806~73)が洗練させた「功利主義」、前二者への反発からアリストテレス哲学の復興を唱え20世紀半ば以降発展した「徳倫理学」(virtue ethics) の三つが挙げられる。他に、ホッブズ(Thomas Hobbes 1588~1679)が近代政治哲学として定式化した「社会契約論」や、普遍主義を基礎に据えた倫理学理論の見直しをはかる「ケア倫理」など、多くの理論が立てられ、論を戦わせている。