世界は現にある状態が最も善いと考える立場。最善観、楽天主義ともいう。対義語に、ペシミズム(pessimism)、悲観主義、厭世主義がある。ライプニッツ(Gottfried Wilhelm Leibniz 1646~1716)は、神が無数にある可能世界の中で最善のものを選び、それを創造したのだと説いた。最善の世界であるにもかかわらず悪が存在するのは、神があくまでも、事物が相互に共存可能であるような世界の中から、最も完全性の高いものを選んだからである。これに対して、ヴォルテール(Voltaire 1694~1778)は、風刺小説「カンディード あるいは楽天主義説」(1759)に、最善説を唱える哲学者パングロスを登場させ、数々の不幸にあわせることで、ライプニッツを揶揄(やゆ)した。また、ペシミズムの哲学者としては、ヴェーダの厭世観から影響を受け、世界は苦であると考えたショーペンハウアー(Arthur Schopenhauer 1788~1860)を挙げることができる。