情報技術やインターネットの発達にともなって生じる様々な倫理的問題を検討し、その解決をめざす倫理学の一分野。情報化社会では、物や資本と同様に知識や情報が価値をもつようになるが、今日この傾向は、コンピューターやインターネットの普及を通じて深化している。それにともない、コンピューターやインターネットという場面での情報のあり方が倫理的問題として認知されるようになった。そのためコンピューター倫理学が情報倫理学の基礎となっている。
情報倫理学が扱う問題には次のようなものがある。例えば、デジタル化された情報は複製と配布が容易であるため、ソフトウエア、音楽、映像、テキスト作品などの知的所有の問題をいかに扱うべきかが問題となる。また、ネット上での個人情報のやり取りが増加するとともに、様々な個人情報が企業や行政機関に蓄積されるようになり、それがプライバシーの侵害や監視社会の成立などに結びつくことが懸念されている。さらに、様々な情報技術は、個人による不特定多数に向けた情報発信を容易にしたが、その情報が公序良俗に反する場合、それをどのように規制するかが表現の自由との兼ね合いで問題となる。あるいは、情報技術を用いて情報にアクセスできる者と、そうではない情報弱者とのあいだに格差(デジタル・デバイド)が生まれており、それをいかに解消するかも課題である。