自然保護・環境保護の思想、その思想にもとづく社会運動。エコロジーはドイツの生物学者ヘッケル(Ernst Heinrich Haeckel 1834~1919)による造語で、もともとは生物学の一分野である生態学を指す。今日では、エコロジーは環境保護の思想と運動を意味することがある。これはスワロー(Ellen Henrietta Swallow Richards 1842~1911)の用法に由来する。生態系(エコシステム)についての生態学的知見にもとづいて、エコロジー思想は環境破壊型の生活様式や価値観を変革すべきだと主張する。「沈黙の春」(1962)のカーソン(Rachel Louise Carson 1907~64)は、その先駆けであると言える。
ネス(Arne Naess 1912~2009)はディープ・エコロジーを標榜(ひょうぼう)し、人々の健康と物質的豊かさにとらわれている「浅い」エコロジーを批判し、ホーリズム(全体論)、生命圏平等主義、多様性と共生といった新しい自然観にもとづく環境保護への転換を主張した。ブクチン(Murray Bookchin 1921~2006)らが提唱するソーシャル・エコロジーによれば、環境破壊の背後には人間による人間の支配という要因が存在するのであり、環境保護が成功するためには社会的な権力構造の変革が必要である。エコ・フェミニズム(エコロジカル・フェミニズム)は、男性による自然支配と男性による女性支配とが同じ根をもつと想定し、男性による女性支配の解消が自然破壊の抑止に貢献すると主張する。なお、エコロジー思想に関しては、環境保護を優先するがゆえに個人の自由や権利を制限するエコファシズムにつながるのではないかという批判が提出されている。