記号が意味を指し示す方法として、デノテーションとコノテーションがある。「バラ」という記号が、バラ科の植物一般を示すものとして用いられるとき、その意味はデノテーションされているが、その記号によって、例えば「愛」や「情熱」などの象徴的意味が付随して理解される場合には、その意味はコノテーションとして示される。すなわち、ひとつの記号によって、それが属する記号体系の中で割り与えられた意味が明示的な仕方で示されることがデノテーションであり、何らかの意味が明示的ではない仕方でデノテーション的な意味とともに示されることをコノテーションというのである。
ロラン・バルト(Roland Barthes 1915~80)は、現代のモード誌に用いられる言説を分析し、デノテーションとして示される言葉の背後に含まれる意味作用の機能を分析した。「競馬場(フランスでの社交場)ではプリント柄が優勢です」という言説は、明示的な言葉の意味の背後に、「勝利」「流行」「上流」などといった象徴的な意味を介在させながら、いま何を買うべきかを読者に感じとらせる機能をもっている。現代社会において用いられるコノテーションの構造を分析することで、バルトは、現代における言説の「神話作用」を示したのである。