リゾームは、地下茎を意味する哲学用語。ツリー(木)構造と対比して語られる。ツリー(木)が、ひとつの根を基礎とし、太い幹に支えられて多くの枝葉を成していく構造をもつのに対して、リゾームは、構造全体の代謝を支える中心をもたず、地中を自在にのび広がって、様々な場所に生成の拠点を形成する。哲学者のジル・ドゥルーズ(Gilles Deleuze 1925~95)とフェリックス・ガタリ(Flix Guattari 1930~92)は、この概念を、新しい社会・認識・存在のあり方として、従来の中央集権的で統制的な諸構造と対置させた。進化論のようにひとつのルーツ(根)から人類に至る過程を記述するのでもなく、ファシズムのようなかたちで人々の意識をひとつの極に集中させようとするのでもなく、あるいは資本主義のように、「自由」の名のもとに人々を支配的な欲望のもとに統制するのでもなく、既存の構造を横断的に解体しながら、生産の拠点がそこここに結節していく構造が、リゾームという概念によって語られたのである。
軍事設備として開発されたインターネットが、新聞やテレビなどの既存メディアに代わる地位を得る時代にあって、拠点分散型のメディアのあり方をあらためて「リゾーム」ととらえ、そこに新しい社会構造の可能性を見ようとする論者にアントニオ・ネグリ(Antonio Negri 1933~)などがいる。