ある集団による他の集団への支配・指導のこと。語源は「軍隊の指揮権・指導」を意味するヘーゲモニア(hgemonia 希)で、「政治的支配」を意味するアルケー(arch 希)としばしば対比的に使われた。この概念は、20世紀初頭に、ロシアのマルクス主義者らによって、階級闘争における指揮権の意味で用いられるようになったが、特にイタリアのマルクス主義者グラムシ(Antonio Gramsci 1891~1937)の理論で知られている。レーニン(Vladimir Ilyich Lenin 1870~1924)が、政治社会における権力支配である「プロレタリアート独裁」を目指したのに対して、グラムシは市民社会における指導と同意の契機を重視した。また、単に上部構造における倫理的・文化的な指導を意味する、クローチェ(Benedetto Croce 1866~1952)のヘゲモニー概念を批判的に継承して、経済的土台との有機的な関係をも捉えた概念へと改鋳した。こうして、政治権力の奪取によって一挙に革命を起こすのではなく、教育や同意を通じて集団のイデオロギーを統一し、労働者階級を政治的・倫理的・経済的に統合することによって、ヘゲモニーが獲得されなければならない、とされる。