1980年代にイギリスとアメリカで誕生した、障害を社会的なアプローチで問う学問。70年代からの障害者運動を背景にもち、障害当事者が有力な研究者である。
障害学に特徴的なのは、障害を医学的な治療対象とみなし、障害者個人を社会福祉の受益者としてのみ扱う障害の「医学モデル」に決然と抗する点にある。障害学が提示するのは障害の「社会モデル」である。社会モデルではまず、いわゆる障害を「インペアメント」と「ディスアビリティ」とに区別する。インペアメントとは身体的な欠損を意味し、ディスアビリティはインペアメントをもつ人が現に被っている社会的な不利益あるいは制約である。本来インペアメントそれ自体は人がもつ一つの特性にすぎないはずである。しかし、現実には適切な環境整備が不在であるがゆえにインペアメントをもつ人々が社会の周縁部へと追いやられて、その結果さまざまに抑圧されていると障害学は告発する。障害学によれば、真に問われるべきなのはディスアビリティの方であって、それはすなわち障害者を含む社会全体をいかに構築するかという問題そのものである。