専門職としての技術者が身につけるべきとされる倫理的にふるまいうる能力あるいは徳目。技術倫理あるいは工学倫理とも称される。高度に発達した科学技術が広く社会に及ぼす影響に鑑み、技術上の専門知識習得だけではなく、エンジニアリングに伴う責任を自覚し、具体的な状況下で適切な倫理的な判断を下す能力の涵養(かんよう)が技術者教育に求められている。1990年代後半からこの傾向は顕著となり、アメリカの技術者教育認定組織(ABET)や日本の日本技術者教育認定機構(JABEE)といった国際的な技術者資格認定機関では、教育プログラムに必ず技術者倫理が組み込まれるようになっている。いまや日本では、工学部で技術者倫理を必修科目としている大学も多い。
専門職養成を目的とすることから、教科書では技術者が職場で直面しうる倫理的なジレンマに関わる豊富な事例研究が記載されている。しかし、科学技術と社会の関係を問い直すという問題意識は、応用倫理学全般と共通している。したがって、生命倫理あるいは環境倫理との関連も等閑視はできない。この観点からは科学技術倫理と呼ばれることもある。