人種(race)に基づく思想や差別のことであり、「人種主義」や「人種差別」としばしば訳される。しかし、人種概念そのものがきわめて曖昧(あいまい)であり(ヒトという種は生物学的には一つしかない一方で、身体的特徴には無限のグラデーションがある)、レイシズムは民族差別について広く使われている。最初の人種主義的思想は、15世紀末のスペインでユダヤ教徒とイスラム教徒を追放・改宗させたことに端を発する。とくにキリスト教徒に改宗することの多かったユダヤ教徒とその子孫が、改宗しても「変わらぬ血(血筋)」を追及されたために、ユダヤ教徒が「ユダヤ人種」化されていった。さらに16世紀以降、大航海時代に世界の植民地分割と奴隷貿易が進展すると、ヨーロッパ人が植民地の先住民やアフリカからの奴隷を支配・酷使することを正当化するために、人種的差異化をはかった。このヨーロッパの「内なるレイシズム」と「外なるレイシズム」が、それぞれナチス・ドイツのユダヤ人迫害と南アフリカ共和国のアパルトヘイトという形で頂点に達する。
現代世界では、グローバル化が進み移住労働者が世界規模で増加すると、自民族中心主義・排外主義も横行し、移住者や民族的マイノリティーに対する迫害が多発するようになる一方で、インターネットの普及によって差別発言が無規制に広まっていった。こうした差別を指弾する際に「レイシスト」という名指しが使われるようになり、日本でも2000年代以降、対アジア関係の悪化にともない、街頭やネット空間で朝鮮人や中国人や非正規の移住労働者に対する攻撃的言動が蔓延(まんえん)してきているが、それを批判し対抗する行動もまた活発となり、その文脈で「レイシズム」という言葉が広まっていった。