2009年に開催された「国宝阿修羅展」には東京会場(東京国立博物館)と福岡会場(九州国立博物館)合わせて、約165万人も訪れた。さらに同年秋の正倉院展と同時期に、奈良市の興福寺・仮金堂で催された「お堂でみる阿修羅」展では約25万人を超えた。合わせて約191万人である。会場には長い行列ができ、待ち時間は2~3時間にもなった。ここ数年、東京国立博物館では毎年のように寺院や仏像の特別展が開かれ、30万~40万人の観客を集めてきたが、08年の「国宝薬師寺展」で約80万人を動員して仏像人気の勢いに弾みをつけ、今回の「阿修羅展」でブームが一挙に爆発した観がある。10年秋には同じく東京国立博物館で「東大寺展」が開催される予定。背景にはグラフ誌の特集やDVD、仏像をやさしく楽しく解説した書物などが現れて、この10年ほどで仏像が身近になっていったことなどがある。みうらじゅん・いとうせいこうの「見仏記」シリーズ(1993年~)も、独自の視点でこれに貢献している。仏像ブームの担い手は中年以上と言えるが、特に30~40代の女性を中心に仏像オタクの「仏像女子(仏女)」も出現している。また、近年仏像泥棒が増加し、文化財指定の仏像や有名寺院の仏像がしばしば盗難に遭うのも、仏像ブームの影響かもしれない。