労働や食料などのため人間に役立った動物に感謝し、その霊を慰める儀礼。特に最近では、猫・犬・小鳥など=愛玩用小動物のペット供養が盛んである。仏教における「供養」とは懇ろにもてなすことを意味し、仏法僧の三宝や、父母、死者などに、香華(こうげ)・灯明(とうみょう)・飲食・衣服などを捧げることをいう。死者の霊の冥福を祈る追善供養、餓鬼道に堕(お)ちた餓鬼に食物を施す施餓鬼供養がよく行われ、そこから動物供養も生まれたと考えられている。縄文遺跡から犬の埋葬例が見つかったりもしているが、現在に残る動物供養は、17世紀中ごろに起きた明暦の大火による横死者を埋葬した江戸の両国回向院に始まるとされる。馬頭観音として供養され祀られる馬をはじめ、牛、犬、猫から、鳥・鶏、鯨・海豚(イルカ)、鰻・河豚(フグ)などの魚に至るまで、今も神社仏閣などに供養塔や慰霊碑が建ち、研究施設などでは実験用動物も供養されている。鯨供養は全国で行われ、沿岸捕鯨が栄えた地域などに鯨墓を見ることができる。近年は、新しい供養の形として動物・ペット霊園が繁盛し、ペットロスへのメンタルケアに一役買っているが、飼い主の喪失感や失望感に付け込んだ営利目的の面も否定できない。ペットという言い方ではなく、コンパニオン・アニマル(連れ添い・朋友動物)と呼んで、飼い主と一緒の墓に埋葬する共葬墓も多くなっている。また、生き物ばかりでなく、針供養をはじめとして、筆、茶筅(ちゃせん)、包丁、はさみ、人形、扇など、使い古した器物に対する供養も、江戸時代の頃より年中行事となっている。