生や死に関する考え方。2010年は、全国で所在不明及び生死不明になっている高齢者がかなりの数に上っていることが明らかになり、近親者と縁なく「無縁死」を迎える「無縁社会」が改めてクローズアップされた。10年9月10日に発表された法務省調査によれば、戸籍上は生存していることになっている100歳以上の住所不明者は約23万4000人を超え、うち「江戸時代生まれ」が800人以上いたという。また、NHKの調べによれば、路上でひとり死を迎える行旅死亡人(行き倒れ死)は年間約3万2000人に上るという。地縁・血縁のきずながどこでも弱まり、誰にもみとられることのない孤独死、また行旅死亡に直面せざるを得ない、いわゆる無縁仏になる可能性が、誰にでもある時代といえよう。他方、直葬や葬儀費用がトピックになっているように、自身の葬式や埋葬に対する関心は高まっている。10年11月4日付「朝日新聞」朝刊の「死生観」世論調査を見ると、「自分の葬儀をしてほしい人」が58%、「しなくてもよい人」が36%。「葬儀の参列者は身内や親類だけでよい」(家族葬・密葬)が74%、「多くの人に参列してほしい」が18%。通夜や告別式を行わずに火葬だけで済ます「直葬に抵抗感がある」が51%、「ない」は46%で、葬儀の簡素化が時代の趨勢(すうせい)であることを示している。葬儀の用不要が直葬の賛否(好悪)と連関しているのも興味深い。また、葬儀費用の全国平均約230万円(07年度日本消費者協会調査)に対して、「多額過ぎる」は85%、「適当」が10%で、高額の葬儀費用や形式的な儀礼などへの不満が見て取れる。宗教学者島田裕巳の「葬式は、要らない」(10年、幻冬舎新書)がベストセラーになったのも、このためだろう。今後、墓地の不足や高額化、後継者難に伴い、家墓の維持が困難になり、ロッカー式納骨堂やネット墓地などへの移行が進むことが予想される。一方で、地縁血縁の希薄化により寺離れも進み、特に都市部ではかつての寺檀関係が失われて、無縁墓も増えていくことだろう。