散骨とは、火葬した後の遺灰を、遺族が死者になじみのある海、空、山などにまく葬送方式。近年マスメディアを通じて一般に知られ、定着してきた。これは遺体を自然にかえす自然葬の一種で、ほかに風葬、鳥葬、土葬、水葬などがある。2010年11月4日付「朝日新聞」朝刊の「死生観」世論調査によれば、自然葬への関心は、「ある」が39%、「ない」は59%。自然葬と墓地埋葬では「自然葬」が21%、「墓地埋葬」が69%で、墓地への埋葬を望む人は多いが、自然葬がすでにある程度は定着してきている実情を示している。これまで「墓地・埋葬等に関する法律」(墓埋法)によって、焼骨でも骨灰でも海や川にまき散らすことはできないとされてきた。しかし1991年、葬送のあり方は基本的人権の一環だと主張する「葬送の自由をすすめる会」によって、初めて相模灘で散骨が行われた。この時法務省は、刑法の遺骨遺棄罪との関連で「葬送のための祭祀で節度をもって行われるかぎり問題はない」との見解を示し、厚生省(当時)は「墓埋法では散骨を想定していないため法の対象外」とした。もはや散骨は違法ではなくなっている。また、墓埋法が墓地以外では焼骨の埋蔵はできないとしていることから、最近では、寺院の所有する山林で樹木の下に遺骨を埋める「樹木葬」や、墓石の代わりに樹木を植える「植樹葬」も行われている。近年海外では、遺灰を乗せたロケットを打ち上げて、地球を回った後に大気圏内で燃え尽きさせる「宇宙葬」が行われ、日本人も合葬されている。さらに、月に遺灰を送る「月面葬」も計画されているという。子供のいない夫婦、墓を維持する負担を息子や娘にかけたくないと思う親、親と同居しない子供、単身者の増加、寺との無縁化といった面ばかりでなく、墓地・霊園造成による自然破壊を憂える人や、画一的で商業主義的な葬儀を嫌う人なども、散骨を支持する層になっている。