2008年1月に、『清貧の思想』『や声に出して読みたい日本語』などのベストセラーを出した出版社、草思社が民事再生法の適用を申請して、事実上倒産した。『間違いだらけのクルマ選び』など数多くのベストセラー、ロングセラーを出していただけに、出版不況を象徴する倒産劇と話題になった。しかし、草思社は、同じようにベストセラーを出している幻冬舎に比べると、文芸書をほとんど出していないという特徴があった。
逆に、文芸書をメーンに創立された幻冬舎は、出版不況の時代においても、その勢いを衰えさせていない。いずれの出版社も、カリスマ的な編集者を中心に、ベストセラーを仕掛けることによって業績を拡大させてきたのだが、一方が非文芸書、もう一方が文芸書中心としていたことに、明暗の差があったと考えられる。
不況に強い出版界といわれるのは、「本」が相対的に安価な娯楽・教養のメディアであったためであり、それはミステリーや時代小説などの文芸書が比較的安定した読者を獲得しているからと考えられる。ケータイ小説などのブーム化で、別の意味で「文芸書」の強さも話題となっている。幻冬舎の‘文芸路線'が、今のところ成功しているようである。