手書きの原稿を書く作家がほとんどいなくなった。原稿用紙に手書きで書く原稿が 主流だった時代が長く続いたが、それがワープロ書きのファクス送稿となり、現在では、パソコンで書いた原稿をそのままメールで送稿することが当たり前となった。作家の生原稿は、以前から古書店で商品として売られていたが、今後、ますます希少となり、骨董(こっとう)的な価値が高まると思われる。村上春樹の生原稿流失事件のように、生原稿そのものは作家自身に帰属する(出版社や編集者ではなく)というのが一般的な理解だが、いったん作家の手を離れた生原稿が古書市場に流通するケースは少なくない。古書店の組合では、現存作家の原稿は、商品化しないという申し合わせをしているようだが、電子原稿(送稿)の隆盛によって、生原稿が少なくなるにつれ、商品化、高騰化は避けられない動きとなっている。