第142回(2009年下半期)の芥川賞/直木賞は、芥川賞は該当作なし、直木賞は、佐々木譲の「廃墟に乞う」と、白石一文の「ほかならぬ人へ」となった。芥川賞の受賞作なしは、近年では第121回(1999年上半期)以来10年ぶり。候補作として前回までよく名前が挙がっていた田中慎弥、山崎ナオコーラ、前田司郎などの作品が挙がらず、候補作5作品に本命視されるものがなかったため、選考委員の票が散らばったのは当然の結果であるといえる。直木賞での、超ベテランともいえる佐々木譲の受賞は、遅すぎたといわざるをえない。白石一文は、父親の白石一郎が第97回直木賞の受賞者。これまで、芥川賞で吉行淳之介・理恵の兄妹、直木賞で藤田宜永・小池真理子夫妻、直木賞の角田光代と芥川賞の伊藤たかみ夫妻(後に離婚)という家族受賞はあったが、両賞を通して親子受賞は初めてである。太宰治、津島祐子のように、受賞が当然視されながらも、親子で芥川賞を逸しているケースもある。