東日本大震災は、震災大国日本で、これまで地震や津波などの自然災害がどのように文学作品に描かれてきたかという「震災と文学」の問題を浮き彫りにした。2006年に死去した吉村昭の「海の壁 三陸沿岸大津波」(1970年、84年中公文庫版刊行時「三陸海岸大津波」に改題)は、今回の地震・津波をまるで予想していたかのように書かれていたものとして、文春文庫版(2004年~)が一時は品切れとなるほどのベストセラーとなった。なお、吉村の妻で作家の津村節子(→「芥川賞作家同士の結婚」)は、増刷分の印税を震災復興に寄付すると表明した。明治時代の津波の記録、関東大震災の際の文学者たちの発言や言説など、3.11を機に復刊、復刻されたものもある。また、11年7月に死去した小松左京が1973年に書いた、大地震と火山の噴火によって日本列島が沈没するというストーリーの「日本沈没」が、改めて再読されるきっかけともなった。