2010年にタブレット型端末としてアップルから「iPad」が日本で発売され、さらにソニーの「Reader(リーダー)」日本語版、シャープの「GALAPAGOS(ガラパゴス)」、NTTドコモが韓国の三星(サムスン)電子と組んで開発した「GALAXY Tab(ギャラクシー・タブ)」などが相次いで発売され、電子書籍元年という謳い文句は、現実のものになったかに思われた。だが、11年9月には早くも「ガラパゴス」がメーカー直販終了となり、「撤退か?」との報道がなされるなど、電子書籍は、一歩前進二歩後退という形となった。これは、日本の本の読者が電子書籍にまだついて来れないという事情もあるが、何と言ってもソフトの圧倒的な不足が理由で、読者のニーズにあった電子書籍がほとんど提供されていないという現状がある。アメリカとは違って文学作品の著作権(→「著作権/引用」)は、ほぼ著作者が握っている日本の現状において、著作権をクリアして電子化するには、いくつもの階梯があり、現段階では出版者側も著作権者側も、まだきちんとした了解のもとに電子出版の契約を交わす、というところまでなかなかたどりつけていない。個々の著作権者、出版社との交渉は、端末機メーカーとしては苦手なところであり、アマゾン、グーグルなども、日本の著作権事情の複雑さに足踏みをしている状態だ。11年、講談社、新潮社、学研の3出版社は、今後すべての新刊書籍を電子化することを相次いで発表。また既刊本でも講談社は「選書メチエ」と「講談社学術文庫」、新潮社は「新潮新書」を手始めに、全電子化を進めるという。ただ、出版界全体の足並みはそろわず、規格の問題などもあり、混沌(こんとん)、乱戦状況はまだしばらく続くと見られている。