上半期(第145回)の芥川賞は受賞者なし。直木賞は池井戸潤の「下町ロケット」に決まった。芥川賞の受賞者なしは、第142回に続いて、1年半ぶり。これまでの有力候補作家が候補となっておらず、選考前の段階から「受賞作なし」はささやかれていた。最終候補作の選考自体に疑念が持たれるかもしれない。直木賞の「下町ロケット」は、下町の町工場を舞台とした先端技術の知的財産権を巡る物語。日本の産業界の問題点があぶり出されている。下半期(第146回)は、芥川賞に田中慎弥の「共喰い」と円城塔の「道化師の蝶」が、直木賞には葉室麟の「蜩ノ記」が決まった。受賞記者会見で田中慎弥は、終始不機嫌な様子で、「(芥川賞を)もらってやる」と発言、選考委員の石原慎太郎に対する批判的言辞を吐いたことが話題となり、石原委員の選考委員辞退の契機になったと取りざたされた。これで芥川賞の選考委員は池澤夏樹、黒井千次、石原慎太郎の三氏が辞めて、空席となったが、2012年2月21日、奥泉光と堀江敏幸が新選考委員に就任した。