SF小説界の鬼才にして、ジャンルを超えた多くの実験作を生み出してきた筒井康隆が2012年7月13日から13年3月13日まで、朝日新聞朝刊に連載した長編小説。幼少期に性器を切り取られた美貌の男性の一代記だが、段落の無視、引用符なしの会話などの破格な文体とともに、古語や枕詞などを多用し、滅多に見られない日本語の豊饒(ほうじょう)な奥深さを感じさせる作品となっている。しかし、華麗な語彙(ごい)と物語の流れとは必ずしも有機的に融合しておらず、内容と表現の実験性との間には乖離(かいり)があるようにも感じさせる出来上がりとなっている。