夢とは起きているときに記憶した情報が、睡眠中に、主としてレム睡眠時に、再処理・統合された心理生理現象のこと。記憶情報は、類似したもの同士が、あるいはランダムに結びついて夢となる。科学的研究が進められていない時代には、夢は睡眠中に悪魔がとりついたものであるとか、未来を予知するものであるなどと、神秘的にとらえられる傾向があった。1900年代にはフロイト(S. Freud)が「満たされない願望の充足をする手段」と説いた。しかし50年代以降は、夢はもっぱら生理学と認知科学の観点から研究が進められてきた。夢の機能についての仮説には「夢は重要でない記憶を消去するのに役立つ」「夢は覚醒時に学習した事柄を記憶痕跡として残す」「夢は、運動が抑制された状態で、覚醒時にとる行動を脳内でシミュレーションしている状態である」などがある。また、夢は思い出そうとしても忘却してしまう性質を持つ。思い出しやすさについては個人差があり、自分の体に起こったささいな症状を気にしやすい人や、芸術家など自分の内面に注意を向けやすい人が、夢を思い出すことが多い。また、ストレスがかかるときにも夢を思い出しやすい。夢の内容が恐怖であるあまり、中途覚醒してしまうものを悪夢(nightmare)という。