自殺を直接の目的としないで自分を傷つける行為をいう。自傷行為の種類では、リストカットなどが一般に知られているが、手首を刃物で切るだけではなく、体にとがったものを刺す、爪で皮膚を傷つける、頭を壁に打ち付けるなどがある。そのほかにはオーバードウス( overdose 薬物の過剰服用)や、過度のボディー・ピアシング( body piercing 身体部位を突き刺す行為)もこれに含まれると考えられる。自傷行為を行う人には、几帳面な性格でストレスをためやすい、自分は生きていても仕方がない、誰にも認められないという虚無感がある。境界性人格障害( borderline personality disorder )の患者の症状として、自傷行為やその企図がよく見られる。さらに「痛み」の感覚が、自分が生きている感覚となる、辛い気分や思考から一時的に逃れる手段となると、慢性化していく。自傷行為自体はSOSのサインであるが、自傷行為者は自分のことをうまく説明できないので、自傷行為を打ち明けられた人はどう助ければよいのかわからない、また自傷行為者は理解してもらえなかった、助けてもらえなかったなど、双方に無力感がしばしば生じる。カウンセリング技法では主張訓練法( assertion training )が、自分に向かった、押さえつけられた攻撃性を適切に処理する効果をもたらす。