精神科医アーロン・ベック(Aaron Temkin Beck 1921~)が提唱した精神療法の一つ。認知療法は精神症状をもたらすゆがんだ認知(物事のとらえ方)を現実的に修正することで、症状を緩和し、再発を予防することを得意とする。例えば、うつ病では、(1)自己と(2)世界と(3)将来に対して、非現実的なほど過度に否定的な認知がみられる。具体的には、(1)「自分は何の価値もない」「自分は変われない」、(2)「誰もが自分のことを軽蔑している」「誰も自分の力にはならない」、(3)「物事が良い方向に向かう見込みはない」「これからも失敗ばかりするだろう」などである。これらのゆがんだ認知が、「他のほとんどの人は頼りにならないけれど両親は自分を支えてくれる」あるいは「これからも失敗することもあるだろうがうまくいくこともあるだろう」など、つまり「思っているほど“現実”は悪くない」と、より現実的な認知に納得しながら修正する訓練を実践していく。近年、うつ病や不安障害への心理支援の分野でも、その効果の検証とエビデンス(証拠)が重視されており、認知療法は2010年度より保険診療が適用となった。