近世の時代区分は諸説があるが、ここでは織豊期(16世紀末~17世紀初)から明治維新(1867年)までを近世とし、それ以後を近現代とする。この時代は、近世の有力な城下町や窯業・鉱山遺跡、近代の重要建築や戦跡遺跡などを除いて遺跡と認定されていないことが多いが、地表下にあるすべての遺構・遺物は考古学の調査・研究対象である。近世には、武家権力の強まりにともない大規模な城下町が成立すると同時に、農業・窯業・鉱業をはじめ多くの産業分野が発展して、国内海運が大いに栄えた。また日本列島中央部の力が南西諸島や北海道に及びつつあり、これらの地域や長崎・出島を通じた国際交易・交流も活発であった。近世遺跡の遺構・遺物量は、先史~中世の総量を上回るものと予想できる。近代には、廃藩置県や欧米技術の導入を契機として、産業構造が大きく変化・発展した一方、集中と過疎の現象も進行することとなった。この時代を二分する、対外戦争期と平和期の境に、第二次世界大戦の戦跡遺跡が存在する。広島・長崎の被爆遺跡、沖縄の戦跡遺跡はその代表であるが、日本の各地に存在する防空壕や空襲・被災の遺跡の意義は前後の時期の遺構・遺物を総合的に比較する中で明らかにできるであろう。