考古学の研究法は、その始まりから学際交流に根ざして発展してきたが、GIS(地理情報システム)は21世紀に、考古学に多大な恩恵をもたらすであろう。考古学の学際的な研究法は一つの課題の研究に寄与することが多いが、GISの特色は、考古学のすべての仕事に有効に使えることである。GISのデータ管理能力は、遺跡地図・台帳データを入力すると大いに発揮される。GISでは新発見の遺跡や遺跡範囲の変更をリアルタイムで更新でき、遺跡が未発見でも遺跡存在の可能性が高い地区を含めて、一般的な地図・DEM(三次元地図)・地質図・空中写真・衛星画像などの上に表示できる。発掘報告は時空間情報をもった遺構・遺物データとして、インターネット上に発信できる。これによって読者は、遺跡の鳥瞰(ちょうかん)図を作成したり遺構の詳細データを知ることができ、遺物データによって肉眼以上に詳細に観察し、その出土状態・接合関係を表示したりすることもできる。研究においては、発掘報告がインターネット上に発信されたら、資料集成も簡単である。そしてGISの地形解析・空間分布解析・可視域復元・交通路復元などの解析機能を、研究者の視点に応じて色々に利用でき、研究者が新しい機能の実装を要請すればGISの機能はさらに高まる。考古学GISによってどのような新しい考古学を創造できるかは今後の課題であるが、少なくとも誰でも資料にアクセスできる平等性と国際性、および議論の客観性は大いに高まると予想できる。