これまでの映画の上映には、フィルム、あるいはデジタルシネマを収めたハードディスクを映画館に輸送するという方法が取られていたが、通信衛星やブロードバンドによってデジタル信号を直接配信する方式の実用化が進められている。2000年に「長崎ぶらぶら節」の、映画館へ衛星を使っての配信興行が試みられ、以後本格的な実証実験が進められている。07年5月に、コロムビアミュージックエンタテインメントと東映が、デジタル配信用の映画「メタル侍」を共同製作。1回に5分弱の作品を4~5本程度配信。はじめから短い単位に分けて製作することで、パソコンや携帯電話向けの配信、テレビ放送、劇場公開、DVDなどさまざまな形に応用できるようにしている。09年1月、東宝、角川グループホールディングは、フィルムの代わりにデジタルデータで映画を配給・上映するシステムを導入すると発表。NTT東日本・西日本の光ファイバー通信回線を使い、12年春までに、両社の約600スクリーンに供給する予定という。アメリカでも07年3月にワーナーやユニバーサルといったメジャー(→「映画団体」)が大手映画館網と合弁で新会社を設立して、映画をデジタル化し、映画館に直接配信する仕組みの本格的な導入を進めている。