フィルムではなく、デジタル・シネマ・パッケージ(DCP)というデジタルデータ映像を上映する映画館が急増している。東映グループが中心となって設立したTジョイのスクリーンはすべてデジタル映写機が設置され、最大手のTOHOシネマズも2011年末までにデジタル化をほぼ完了した。フィルムがデジタルデータに変わることでの利点は、フィルム画像で起こる縦ぶれがなくなり鮮明に映ること、劣化がないので映像の質が変わらないことである。フィルム上映の場合は特殊技術が必要だが、デジタルであれば映写技師も要らない。フィルムを映写機にセットする手間がなく、映像データをサーバーに入れ、ボタン一つで上映開始が可能で、一括制御もできる。TOHOシネマズは、58館全522スクリーンのうち516がデジタル化され、残る6スクリーンも「午前十時の映画祭」が終わり次第、デジタルに移行する。デジタルは撮影・編集コストが軽減されるので、資金を次の製作にまわせ、セキュリティー面でも盗撮した映画館が特定できることから海賊版防止にも役立つ。また音楽、演芸などのライブ中継も可能になるし、3D映画の普及にも役立つと、いいことずくめのようだが、トーキーになって映画弁士、楽隊が失業したように、デジタル上映によって映写技師が失業し、映画製作側もデジタルで撮影することが多くなり、画面が明るくはなったがフィルムならではの諧調(かいちょう)がないと不満に思う映画ファンもいる。それまでの35ミリフィルム映写機がデジタルシネマ映写機に置き換えられることで、フィルム映画はスキャンデータに落としてデジタルリマスターする以外は上映できなくなり、フィルム作品は次第に見る機会が減っていくことになる。