歌舞伎俳優の名跡。屋号は山城屋。初代は元禄時代に活躍した上方歌舞伎(かみがたかぶき)の名優(1647~1709)。近松門左衛門の作を多く上演し、男女の情愛を写実的に表現する和事の完成者として知られる。同時代の江戸で力強い様式的な荒事を作り上げた初代市川團十郎と並び称されるが、その名跡は3代目までで途絶えた。現在の4代目は、中村扇雀を名乗り、父2代目中村鴈治郎と「曽根崎心中」で一世を風靡(ふうび)、美貌(びぼう)の女形として人気を博した後、次第に芸域を広げて3代目鴈治郎を襲名、現代の上方歌舞伎を代表する存在となった。さらに2005年には坂田藤十郎の名跡を231年ぶりに復活し、近松作品の復活上演にも力を注ぐなど、めざましい活躍を見せ、09年には文化勲章を受章。